ハナちゃんと過ごした日々➀食べること生きること。
昨年10月26日、このブログでハナちゃんのことを書きました。
癌と戦っていたわたしの友人の話です。
乳がんで胸部を全摘出して、転移した頭の癌をほぼすべて摘出して、その後の定期検査で転移は見つからず、良かった良かったと胸をなでおろていた矢先、再発し、それが全身に広がっていきました。
52歳という若さですから、広がるのも早かったのだと思います。
今年に入ってから主治医に余命宣告をされたハナちゃんは、自分にかけていた生命保険を生前受け取りして、最期に向けて準備をはじめました。
ハナちゃんには女手一つで育てた17歳の息子さんがいます。
息子さんを出産後すぐ離婚され、お母様所有の天文館のマンションを借りて17年住んでいました。
とてもパワフルなシングルマザーで、その後、再婚どころか恋愛さえもせず、一人息子を立派に育てあげました。
「このマンションをリフォームして母に返したいと思う。そしてみんなが遊びに来れるように広くて綺麗なマンションに引っ越そうと思うの。みんなでご飯を食べたりお茶を飲んだりしたいんだ。今のマンションだとみんなを呼べないからさ。」
ハナちゃんが最後に叶えたかった夢は「新しい住まいでみんなで一緒にご飯を食べる」でした。
治療で5日間入院、そして、しばらく自宅生活、そして治療・・という生活を繰り返していたハナちゃんは、自宅にいる間にその夢を叶えるべく、行動を開始しました。
その頃には、ハナちゃんは時々襲われる痙攣を心配しながら杖をついて歩いていたので、誰かの助けが必要でした。
以前から時々食事をしていた音楽仲間、Kさん、Oさん、そしてわたしで密に連絡を取り合いながら、ハナちゃんの夢を一緒に叶えていく日々が始まりました。
同時に、わたしたちは、以前よりも頻繁にハナちゃんとランチをするようになりました。
ハナちゃんは美味しいものが大好きでした。
(わたしも美味しいものが好きでお互い料理も好きですから話が合いました。イタリアン、お寿司、創作料理、いろんなところに一緒に行きました。)
治療終えいったん退院した4月25日のハナちゃんからのメール。
「レイコちゃん、今日は城山に一泊して息子17歳のサプライズBirthdayをしてきます。
おそらく私がしてあげられる最後のBirthdayかな。
入院中はドクターに更に余命が短くなること告げられたり、引っ越しは無理よーって言われたり笑。何言われても全部実行します笑!」
この4日後の4月29日には一緒にランチ。
ハナちゃんの大好きなパスタのお店を友人のOさんが朝から並んで予約をとってくれました。
ハナちゃんは「やっぱりここのパスタは最高だね」と言いながら、マンション入居の審査がまだ通らないことや、息子さんが頑張っているサッカーのこと、仕事をしていた頃のことを、たくさん話してくれました。
熱く語り、暑くなってきたのか、被っていた帽子も脱いで。
治療のせいで薄くなった髪の毛も全然気にせず、ずっと笑顔でした。
この日のパスタはお皿の半分だけ食べて終わりました。
わたしが「どうしてもプレゼントしたい!」と思い立ちお願いして作っていただいた薔薇の花束に、顔をそーっと近づけて「わーいい匂い~!嬉しい~!ありがとう~!」と満面の笑みを浮かべたハナちゃん。
その笑顔は輝いていました。
すぐ目の前の駐車場まで杖をついて歩くハナちゃん。友人の車に乗り込むまで、一緒に歩き体を支えてあげました。
・・・・・・・・・
「次は5月6日から入院するのが決まったよ。どれだけ治療できるかわからないけど、頑張ってきます。わたし、レイコちゃんのお料理をまたどうしても食べたいから、退院したらおうちに来させてね。」
「じゃあ、元気付けに入院前に是非!
5月3日とかどうですか?」
「信じる」気持ちと「もしも」のことを考え焦る気持ちが、祈りと共に交差する日々の、わたしの口から出た言葉でした。
ハナちゃんはわたしの料理を食べに来てくれたことが過去に何度かあり、「とにかくわたしはレイコちゃんの料理が大好きなの。本当に食べたいのよ。」とずっと言い続けてくれました。
大したものを作っていたわけではないのですが、そんなふうに言ってくれていたハナちゃんのことをわたしは大好きでした。
「美味しく食べられる」「誰かと一緒に食事をする」ということは、人生を豊かにしてくれます。
おにぎり一つとお味噌汁だけでも十分です。
誰かと一緒だったら100倍美味しくて楽しい。
食は共に生きる、ひとりじゃないと実感できるしあわせな時間です。
つづく。
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